令和5年4月以降に適用される労働基準関係法令について

労働基準法を中心とする労働関係法制は働き方や雇用環境の変化に合わせ、毎年のように各種変更・見直しが加えられています。令和5年4月以降、5つのポイントで変更がありました。

目次

月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ

中小企業を対象に月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上に引き上げられます。この引き上げは、働き方改革関連法施行による決定です。

賃金のデジタル払い

賃金の支払方法については、通貨のほか、労働者の同意を得た場合には、銀行その他の金融機関の預金又は貯金の口座への振込み等によることができることとされています。
キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることも踏まえ、今般、使用者が、労働者の同意を得た場合に、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払(いわゆる賃金のデジタル払い)ができることとしました。
資金移動業者の指定要件等については、労働政策審議会労働条件分科会において、公労使の代表に議論いただいた上で、定められました。

危険有害業務を行う事業者に対する一定の保護措置義務付け

労働安全衛生規則等の改正により、2023年4月1日から、危険有害な作業を行う事業者は、作業を請け負わせる一人親方等や、同じ場所で作業を行う労働者以外の人に対して、保護具の使用を周知するなど、一定の保護措置をとることが義務付けられます。
「危険有害な作業」とは、労働安全衛生規則や有機溶剤中毒予防規則など、11の省令によって労働者に対する健康障害防止のための保護措置の実施が、事業者に義務付けられている作業のことをいいます。
また、「同じ場所で作業を行う労働者以外の人」は、一人親方や他社の労働者だけでなく、資材の搬入業者や警備員など、事業者との契約関係の有無は問いません。数次の請負が行われる場合、配慮義務や周知義務を負うのは、請負契約の相手方となる事業者である点に注意が必要です。例えば、三次下請に対する保護措置は二次下請の事業者が行う必要があります。

新たな化学物質管理方法

休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く)の原因となった有害な化学物質の多くが化学物質関係の特別規則の対象外となっていたことから、労働安全衛生規則等を改正し、国によるばく露の上限となる基準の策定、危険性・有害性情報の伝達の整備拡充等を前提として、事業者が、リスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を適切に実施することとするものです。

職長教育適用業種の拡大

労働安全衛生法第60条の規定により、事業者は、その事業場の業種が労働安全衛生法施行令第19条で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者直接指導又は監督する者に対し、安全衛生教育を行わなければならないこととされています。
労働安全衛生法施行令の改正により、令和5年4月1日より、職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種に、これまで対象外であった「食料品製造業(うまみ調味料製造業及び動植物油脂製造業(※)を除く。)」、「新聞業、出版業、製本業及び印刷物加工業」が新たに加わります。

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