労働災害(労災)の概要

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労働災害(労災)とは

労働災害とは、業務が原因で労働者が負傷したり病気になったりすることをいいます。具体的には、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること(労働安全衛生法第2条第1項第1号)」をいいます。

一般に、こうした労働災害のうち、労働者の負傷を防ぐことを「安全」、疾病を防ぐことを「衛生」と呼びます。

労働安全衛生法

上記の「安全」「衛生」について定めた法律が、労働安全衛生法(以下「安衛法」)です。この法律は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的」としています(安衛法第1条)。

安衛法は、事業者等に次のような措置等を義務付けています。

①安全管理体制の確立

事業の規模や業種により必要とされる体制が定められています。

・総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等の選任

・安全委員会、衛生委員会等の設置

②労働者の危険または健康障害を防止するための措置

具体的な措置内容は、「労働安全衛生規則(以下「安衛則」)などの省令で定められています。

・危害防止基準:機械、作業、環境等による危険に対する措置の実施

・作業環境測定:有害業務を行う屋内作業場等において実施

・健康診断 :一般健康診断、有害業務従事者に対する特殊健康診断等を定期的に実施

③機械等ならびに危険物および有害物に関する規制

危険な作業を必要とする機械等や有害物について、製造・譲渡の制限や点検・調査の義務が定められています。

④労働者の就業に当たっての措置

労働者を対象とする安全衛生教育の実施や、一定の業務に就くための資格などが定められています。

・安全衛生教育:雇入れ時、危険有害業務就業時に実施

・就業制限 :クレーンの運転等特定の危険業務は有資格者の配置が必要

労災の認定基準

<業務災害>

従業員が指定の業務に従事している際に、業務要因で負傷または病気を発症した場合は、業務災害に該当します。原則として、事業所の敷地内にいる限り「事業主の支配・管理下」にあると認められ、トイレなどの生理的現象も含まれます。ただし、休憩時間や終業時間前後に発生した事故で、事業所の施設、設備等に要因があると考えられれば業務災害と見なされますが、私的な行為が要因の場合は認められません。

また、出張や社用での外出先で勤務している際に発生した場合は、積極的な私的行為が行われるなど特段の事情がない限りは業務災害となります。 その他、以下のような事情の場合には、労災と認定されないことがあります。

・就業中に行った私用または業務を逸脱する気ままな振る舞いが原因で発生した場合

・従業員が故意に負傷などした場合

・個人的な恨みで従業員が第三者から暴行を受けた場合

地震や台風などの天災で被災した場合

※事業所の立地条件、作業条件、作業環境の災害対策が甘く、被害を受けやすい業務と認定された場合は、業務災害となります。

疾病については、一般的に、次の3つの要素を満たしている場合に業務災害と認定されます。

①事業所に有害因子が存在している

②健康障害を引き起こすほどの強い有害因子にさらされたことが認められる

③発症の経緯や症状が医学的見地からしても業務災害として妥当である

<通勤災害>

通勤災害は、職場への通勤途中や帰宅途中に傷病を負う場合に認定されます。そのため、居酒屋や映画館に立ち寄るなど普段の経路を外れた場合は、基本的に通勤災害とは認められません。

ただし、日用品の買い物や通院、介護、選挙、職業訓練へ参加するなどの場合は例外とされます。

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