売掛債権の回収不能とされる税務上の基準

売掛債権の回収不能とされる税務上の基準には、「法律上の貸倒」、「事実上の貸倒」、「形式上の貸倒」の3つの基準があります。

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法律上の貸倒

文字通り法的手続きにより、「債権の全部又は一部が切り捨てられた場合」をいいます。
次の事実が発生したときに損金算入することとなります。

①会社更生法若しくは金融機関等の更正手続の特例等に関する法律の規定による更生計画の認可の決定

②民事再生法の規定による再生計画の認可の決定

③商法の規定による特別清算に係る協定の認可若しくは整理計画の決定

④破産法の規定による強制和議の認可の決定

⑤私的整理による関係者の協議決定で、次に掲げるもの

  • 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているとき
  • 行政機関又は金融機関その他の第三者の斡旋による当事者間の協議により締結された契約でその内容が上記に準ずるとき

⑥債務者の債務超過の状態が相当期間(通常3年ないし5年)継続し、
 その金銭債権の弁済を受けることができないとき

事実上の貸倒

債権の全額が債務者の資産状況、支払能力等からみて経済的に無価値となり回収不能となった場合をいいます。
次の事実が明らかになった事業年度で損金の額に算入することとなります。
基準は、その全額が回収できないときですが、平成11年3月の法人税関係個別通達により、全国銀行協会連合会が貸出金等に係る貸倒損4つの計上の取り扱いについて、次の照会についても貸倒処理が問題ないとの回答を得ております。

  • 担保物が処分されていない場合であっても、その時価以上に先順位の担保権が設定されている等、当該債権者にとって実質的に取り分がないと認められるときは、担保物がないものとして取り扱っていいか。
    疎明資料…現況調査書、担保物評価書、先順位の貸出残高調査書等
  • 破産管財人から配当零の証明がある場合や、その証明が受けられない場合であっても債務者の資産処分が終了し、今後の回収が見込まれないまま破産終結までに相当期間がかかるときには、破産 終結決定前であっても配当がないものとして取り扱っていいか。
    疎明資料…管財人確認記録、現況調査書等
  • 債務者・保証人等について追求しうる財産がない場合で、1年程度その行方を追及しても行方不明のときは、そのときに回収不能が明らかになったものとして取り扱っていいか。
    疎明資料…興信所調査書、現況調査書
  • 保証人が生活保護を受けている場合(それと同程度の収入しかない場合を含む)で、その資産からの回収が見込まれないときには、当該保証人からの回収がないものとして取り扱っていいか。
    疎明資料…現況調査書

形式上の貸倒

売掛債権で、債務者との取引を停止して1年以上経過した場合の処理をいいます。ただし、固定資産の譲渡による未収金や貸付金又は未収利息等は含まれません。
次の事実が生じたときに損金の額に算入することとなります。

  1. 債務者との取引を停止したとき(最後の弁済期又は最後の弁済のときがその停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過したとき(その売掛債権について担保物のある場合は除きます)
  2. 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき

いずれの場合も、貸倒損失額として計上できるのは、「売掛債権」-「備忘価額」の差額となります。

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